特許

IoT(Internet of Thing) 関連技術特許をどのように審査するのか

※今回は、内容的にかなり踏み込んだ話をしていますので、分かりにくい点がありしたらご容赦下さい。

特許庁が平成29年3月付けでIoT関連技術の審査基準等についてという資料を公表しています。

この中で、私が着目し、皆さんにも役立てると思える部分について紹介したいと思います。

P31:「IoT関連技術等の発明においては、引用発明との相違点に関し、「モノ」がネットワークと接続されることで得られる情報の活用、特定の学習済みモデルから得られる特有の出力情報、又は、特定の構造を有するデータによって規定される特有の情報処理による有利な効果が認められる場合がある。このような場合は、進歩性の判断において、当該効果を「進歩性が肯定される方向に働く要素」の一つとして考慮する」

つまり、個々の処理自体は既存であっても、これらを組み合わせて特有の情報を出力し、それが、従来にはない有利な効果が認められる場合、進歩性の要件をクリアできる可能性があるということだと解釈します。

具体例としては、資料内P52-P54のサプライチェーン管理方法が分かり易いかと思います。

また、非常に興味深い点としましては、資料内P55-P57のランニング支援システムの例が挙げられます。

簡単に記載しますと、ある発明の特徴が、腕時計型デバイスがユーザのランニングを支援する情報を作成するときに、異なるユーザの腕時計デバイスから送信された最新のランニング情報に基づいて得られたラップタイム情報を取得して、前述した情報を作ることにあったとします。

このとき、ユーザのランニングを支援する情報を作成する公知技術があったとします。この公知技術では、他のユーザのラップタイム情報は取得しません(但し、データベースに既に記録されているラップタイム情報を取得して、ユーザのランニングを支援する情報を作成します)。

この場合、発明の進歩性は認められるのでしょうか?特許庁の例では、進歩性があると判断されるようです。

しかし、最終的に特許になるケースでも拒絶理由通知が来る場合があります。このランニング支援システムの事例で考えられる拒絶理由(拒絶理由通知書の審査官の記載)としては、「引用文献にもラップタイム情報を取得することは記載されている。また、どこからラップタイム情報を取得するかは、設計者が適宜選択する事項に過ぎない」等が予想されます。このような記載の拒絶理由を受け取ったとしても、諦めずに反論していくことが大切です。この場合、単に情報の取得先が異なるという反論だけでは、審査官の心証を覆すことは難しいかもしれません。

従って、さらなる反論事項として、「異なるユーザからラップタイム情報を取得することにより、データベースに既に登録されているラップタイム情報を受け取る場合に比べ、○○というメリットがある。そのメリットは、公知文献には開示も示唆もない」ということを述べることが有効かと思われます。