特許

特許出願の拒絶理由通知、もうだめだと思っていませんか?(その1)

こんにちは。八王子市で頑張る弁理士の井上です。早いもので今年もあと1ヶ月ですね。

今日は、特許出願をし、特許庁に審査をしてもらった結果、経験上9割近くの確率で来る拒絶理由通知についての記事を書きます。拒絶理由は特許法に沿って審査官により通知されます。個人的な感想ですが、やはり「拒絶理由通知」という名称は何とかならないかと思います。「拒絶」という言葉が非常にドキッとさせられます。「審査結果報告書」とかにならないでしょうかね・・・

拒絶理由通知が来ると、まずは、どのような拒絶理由が発せられたのかを確認することになります。拒絶理由の経験上6割~7割が進歩性なし(世の中に既に存在する発明を組み合わせると貴方の発明は簡単に思いつくから特許にすることはできない)という拒絶理由です(特許法第29条第2項)。

進歩性なしという拒絶理由通知の一例を挙げます。貴方が「タイマーを取り付けることにより、時間がくれば自動的に扇風機が停止する」という便利な効果を持つ扇風機を発明したと想定します。

そして、今回の拒絶理由の例は、「扇風機とタイマーはそれぞれ既に世の中にあるものであるから、これらを組み合わせれば貴方が発明した扇風機は、簡単に思いつくことができるから特許にすることはできない」という拒絶理由が来たとします。

拒絶理由通知が来ると、まずは、審査官の認定が正しいか否かを判断することになります。今回の例では、まずは、本当に扇風機とタイマーが世の中にあるものかどうかを確かめます(当たり前だと思ってもきちんと確かめることが大切です)。

扇風機とタイマーが世の中にあることを確かめた後に、既存の扇風機とタイマーを組み合わせて今回の発明を思いつくことができるのか(きっかけ(動機付け)があるかどうか)を確かめます。

例えば、既存のタイマーは時間が来ればアラームを鳴らすものしかなかった場合は、扇風機と既存のタイマーを組み合わせて今回の発明を思いつくことができると言えるでしょうか?

答えはNoです。何故なら扇風機に従来のタイマーをつけただけでは、扇風機の消し忘れを報知してしてくれるという効果しかありません。この場合、扇風機を止めるには、所有者がわざわざ扇風機の場所まで行って停止スイッチを押す必要が生じます。また、所有者が消し忘れて出かけてしまった場合、アラームが鳴り続けるだけで扇風機は停止しません。

今回の発明では、時間がくれば自動的に扇風機が停止するという従来にはない有利な効果が得られます。従って、この事例では、審査官の意見に承伏せず、発明した扇風機の有利な効果や従来のものを単に組み合わせただけでは発明には至らない理由(前述したもの)を意見書にて述べ、発明が特許されるべきものであることを主張します。

このように、審査官の主張に対し、論理的な反論をすることにより、拒絶理由が解消するケースは結構あります。審査官の主張に対し簡単にもっともだと思いこみ、そこで権利化を諦めてしまっては非常にもったいないです。

アクティブ特許商標事務所 井上真一郎