為替の影響を感じる出来事

弁理士が為替の影響を感じるとき、それは、国際出願時です。

見積を作成するために昨年8月のものを見てみました。そのときは、国際出願時の印紙代が、基本料金¥119,900に30枚を超えると1枚につき¥1,700円追加でした。

ところが、今年の4月から、基本料金¥164,300に30枚を超えると1枚につき¥1,900になります。円安の影響は、国際出願が多い企業にとっては頭の痛いところではあります。

とは言っても円高のときにたくさんアイデアを出して出願しておくということがなかなかできないのがもどかしいところですね。

 

特許の開放

1月14日付けの世界日報には、「トヨタ自動車はこのほど、燃料電池車(FCV)の普及を目指し、単独で保有する燃料電池関連の全ての特許を開放すると発表した。」と記載されています。理由は、「ライバル企業の参戦を促し、市場を創出するための決断」と記載されています。

これにより他社は特許公報に記載された技術を用いて、ものづくりが可能となります。記事には記載されていませんが、市場を創出することと同じ位大切な戦略として、グローバルスタンダードになるというトヨタ自動車の思惑が見て取れます。

かつてのベータ等のように、技術や販売時期で先行していても規格争いで破れ売上に繋がらなかった例は散見されます。他社が燃料電池車を開放特許を用いて作るということは、すなわちトヨタ自動車方式で作るということになります。大企業ならではの戦略と思われがちですが、キーとなる特許を取得し他社を制御する戦略は、製品によっては中小企業でも十分可能です。

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特許や商標を取得した後の期限管理に注意

最近、「特許や商標を取ったけど更新を忘れて期限が切れてしまった」という話を聞く機会が連続してありました。特許料の納付を忘れて一定期間経過すると、特許権が消滅してしまいます。商標の更新登録の申請を忘れてしまった場合は、商標権が消滅してしまいます。

特許権が消滅した場合、極稀なケースを除き、回復させることはできません。商標は、再出願により登録できる場合がありますが、中には商標権の期限切れが狙われて、第三者が素早く商標を取得してしまうケースもありますのでご注意を。

特に商標は次の納付時期が最長で10年後になるということもあり、また、特許庁から期限に関する通知は全くありませんので自己で何らかの期限管理をすることになります。最近は、グーグルカレンダー等、10年先のスケジュールを書き込むことができる電子カレンダーもありますので、上手く利用すると良いでしょう。

ちなみに、特許事務所に手続の代理を依頼した場合でも、期限管理をしてくれるとは限りません。特許の取得や商標の登録をもって代理業務が終了となる場合も多いからです。期限の管理方法について全く何も言わない特許事務所はないと思いますが、気になる場合は確認をした方が良いでしょう。また、期限管理をする専門の会社に委托するという手もあります。その場合は、もちろん管理委託費用が発生します。

また、委托を頼んだ後でも住所やメールアドレスが代わった場合は、委託先に是非一報を忘れないようにして下さい。委托先からの期限管理に関するメールや郵便が届かない場合があります。

また、住所や名称が変わった場合には、特許庁への住所変更手続、名称変更手続をお奨めします。例えば第三者によって特許無効審判が請求された場合には特許庁から権利者へ通知が行きますが、この通知が届かないと、不利益を被る可能性があるからです。この住所変更手続、名称変更手続は、弁理士が代行することができます。

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展示会での公表には注意

先日、顧問先が製品を出展した展示会に足を運びました。顧問先のブースを拝見してしばしお話しさせて頂いた後に、「折角新しい技術を見る機会だ、これで帰っては勿体ない」と思い、他のブースも色々と見学しました。その際、他社の営業や技術の方と話をして気づいた点がありました。

①社名や製品名を外国で使おうとしているが、商標登録を意識していない。

→他人に商標を取られると、自社の製品名が使えなくなるおそれがあります。一度他人に取られた商標を取り返すのは非常に困難です。売上が伸びて商標が有名になるほど、危険性は高まります。言い方は悪いかもしれませんが、日本では弱点(本例では商標の未登録)を突くと「卑怯だ」という考え方もありますが、外国では「つけ込まれる隙を見せた方が悪い。」という考え方を持つ国が多いのです。

取り換えそうとしても「御社にどういう権限(権原)があってそういうことを言うのか」と言われてしまえば、「昔から使用してきた」、「こちらがオリジナルだ」という言い分は全く通用しません。「それは商標登録を許可した特許庁に言え、我々は正当な手続を踏んで商標を取得したのだ」と言われるのは明らかです。

②技術がありふれているがデザインに特徴があるものについて、保護を予定していない。

→模倣されてしまうおそれがあります。デザインを保護する権利として意匠権があります。公表した後でも6ヶ月以内であれば保護できる可能性があります。(※2021年現在では公表した日から1年以内でも保護できる可能性があります)

③初対面の私にもある程度うち解けて来ると、「ここだけの話」と言いながら、社内の実情を話してくれる。

→「凄い技術ですね」、「さぞ試行錯誤して努力なさったでしょう」等と持ち上げられれば、気分を害する人はいません。「実はね・・・ここがこの製品のキモなんだよ」という風に特許出願した製品であっても、特許書類には記載されていないノウハウまでしゃべってしまうリスクがあります。

聞かれるとつい喋りたくなる。話さないと商機を逃してしまう。という気持ちは十分に分かりますが、これ位は良いだろう、とついつい余計なことを話してしまうことがあります。どこまで話してよいのかを予め決めておく必要があると思います。

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特徴ある工業デザインは意匠権でカバーできます

新しい製品を販売する際に、できれば何らかの権利で守り、模倣を防止したいが、特許は高いし、難しいのでちょっと・・・と思われている経営者の方も多いと思います。

新しい製品の外見(デザイン)に特徴があるときは、意匠登録を考えてみるのも1つの手です。

意匠登録は、外見を登録するので、他社が自社製品を侵害しているかどうかの確認が容易であるというメリットがあります。

また、登録率が特許に比べて高く、権利を取得できるまでの期間が特許に比べて短い等、数多くのメリットがあります。

販売当初は権利を取得するつもりはなかったが、売れ行きが良いので他社に真似されないようにやはり権利を取りたいというケースがあるかもしれません。

そんな場合にも意匠権を取得できる場合があります。具体的には、その製品が公になった日から6ヶ月以内であれば、例外措置を受けて出願できる場合があります。
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