著作権と商標権の違い

最近著作権と商標権は何が違うの?という質問を頂く機会がありました。
著作権は、絵画や音楽等の人間の思想や感情を創作的に表現した著作物について発生する権利です。
かつて、東京オリンピックのエンブレムについて、デザインが他国のデザインに似ているのではないかというニュースが連日多く取り扱われました。

真偽の程は未だ定かではありませんが、デザインのロゴも著作物であり、著作物を無断で利用すれば著作権侵害となります。
例えば、猫のキャラクターを新しく創作した場合、そのキャラクター自体は著作権で保護されます。
ところが、そのキャラクターに付けた名前は著作権では保護されません。キャラクターにつけた名前はその用途とセットにして商標登録すれば、商標権で保護されます。
なお、著作権は、権利を得るための手続を何ら必要としません。著作物を創作した時点で自動的に権利が発生し、以後、著作者の死後50年まで保護されます。

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名義変更と移転

特許出願や商標登録出願後に出願人の名義を変更したいケースがあると思います。
その場合、権利化前は、名義変更手続きを行い、権利化後は権利の移転手続を行います。

どちらが簡単かというと権利化前になります。
従って、手続きをする場合は、権利が発生する前がいいでしょう。
では、どのタイミングで名義変更手続きをするのが良いでしょうか。
特許であれば特許査定が降りたタイミング、意匠や商標であれば登録査定が降りたタイミング
が良いと思います。

当然ながら出願した案件が100%権利化できる訳ではありませんから、費用が無駄にならないタイミングで名義変更手続きをするのが良いでしょう。

特許料や登録料を支払う際に名義変更手続を行った旨を記載すれば、特許証や登録証に名義変更後の権利者が記載されます。

特許証や登録証が届いた後は名義変更手続はできません。権利の移転手続を行う必要があります。
この場合、特許庁に支払う印紙代だけで¥30,000かかってしまいます(ちなみに名義変更の印紙代は¥4,200です)。

さらに、権利の移転の際には、権利化前には考えなくてよかった利益相反の問題が発生します。
例えば、会社の代表取締役が、会社が取得した権利を勝手に個人のものにすると、会社が損をしてしまいます。

このため、会社は適正な手続きを踏んで権利を個人に譲渡したという証明が必要になります。
この書類も慣れていれば簡単に作成できるのですが、慣れないうちは、結構苦労します。

※3月14日追記

弊所は今年の4月で丸4年を迎えますが、これまで名義変更手続きはゼロでした。しかし、不思議なもので、今年に入って名義変更手続きのご依頼が立て続けに3件ありました。
この手の手続きミスで多いのが、
1.以前特許庁と手続きをしたときに用いた印鑑と違う
2.印鑑を押し忘れた
3.法人なのに署名を代表取締役としてではなく個人としてしてしまった
4.代理人(弁理士)に依頼した際の委任状がない
5.印紙を貼り忘れた(印紙の額が違った)
等があります。
私も最初はおっかなびっくりでしたが、一度やった手続きは手元に記録が残りますから次からは安心して実行できます。
所感として、この手続きを個人でやるのは、結構な手間がかかると思います。
用意された書類をみれば、大したことがないように見えますが、状況によって用意する用紙が異なりますので、
この手の手続きは専門家に依頼するに越したことはありません。

 

あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。2016年も早くも4日が経過しようとしています。

昨年度からサービスの向上に努めてまいりましたが、忙しさにかまけて中々実現が難しかったところです。

具体的には、このブログの更新もそうですし、お客様により分かり易い料金体系の実現等が挙げられます。

今年度は、余った時間をサービスの向上に使うのではなく、最初からサービスを向上させる時間に当て、残りの時間で実務を行う、という風に変えます。

期待していて下さい。

 

面接は効果バツグン

最近、特許出願で拒絶理由通知をもらうと、ほぼ全てのお客様に審査官との面接をお勧めしています。
理由は、特許査定になる確率が格段に上がるからです(※私の実感です)。

別に審査官は、特許を拒絶してやろうと思っている訳ではなく、現時点の記載では似たような文献が出てくるという事実をそのまま伝えている(ものと信じたい)だけだと思いますので、
こちらの質問には、素直に応えてくれます。
例えば、不明確だと言う拒絶理由通知に対して資料を使って内容を説明すると、その説明で不明確が解消したのかどうかを教えてくれる場合もあります。

また、新規性、進歩性についても、面接の中でやり取りをしていると、なんとなく、「明細書のこの部分の記載が特許になる鍵」ということが分かってきます。その内容で請求項を補正すると、あっさり特許査定という場合も多々あります。

ところで、いつも思うのですが、審査官は総じて本当に記憶力が良いです。
何件も案件を抱えているにも関わらず、該当する案件について、即座に拒絶理由を打った根拠を思い出し、適切に説明してくれます。

お客様からお問い合わせがある度に、慌てて該当ファイルを見返し、場を繋ぎながらなんとか内容を思い出す私から見ると、この能力は本当にうらやましいです。

国際特許出願が増えてきました

弊所も4年目に入り、少しずつ外国出願が増えてきました。

外国出願のルートは大きく分けて2つのルートがあります。

1つは、出願時点で国を特定し、その国に直接出願するルート

もう1つは、出願時点では国を特定せず(一部例外あり)、出願し、折を見て出願する国を決定するルートです。

PCT

(図は、特許庁発行PCT国際出願制度と手続の概要-特許協力条約(PCT)に基づき国際出願の仕組み-4頁から抜粋)

一般的に前者は、出願する国の名前をそのまま取って、例えば米国に出願する場合は米国特許出願、中国に出願する場合は中国特許出願と言います。他方、後者は、国際特許出願(PCT出願)と言います。

特に意識していなかったのですが、3年目位からポツポツと国際特許出願(PCT出願)の依頼が増えてきました。

国際特許出願のメリットは色々ありますが、日本語で出願できることが一番ではないでしょうか。直接外国に出願する場合は、その国の言語に翻訳する必要がありますが、国際特許出願の場合は、日本語で出願することができますので、翻訳にかける時間と費用を節約できます。このため、優先権主張を伴う特許出願の場合、時期的なリミット(基礎出願から12ヶ月)ギリギリまで外国出願の是非を判断することができます。

また、国際特許出願をした場合は、調査が行われ、「見解書」という特許取得可能性を示すレポートが発行されます。そのレポートを見てから、それ以降の手続きを進めるかどうかを判断できます。実質的な審査が始まる前にレポートを受け取ることができるのは、メリットの1つと言えます。

また、国際特許出願をする場合、特許庁が示す中小企業の要件を満たせば、国際特許出願時に特許庁に支払う費用が1/3になります(時限措置)。これも大きなメリットになります。

デメリットとしては、指定する国が1つ(例えば米国のみ)の場合は、直接米国に出願する場合に比べて費用が割高になる可能性があります。