商標

商標権の移転(会社→個人)

会社を解散する等の理由で商標権を会社から個人に移転したい場合があると思います。その場合はどのようにすればよいのでしょうか?会社から個人に移転する場合、会社が譲渡人、個人が譲受人となります。

(1)用意する書類について

まず、最低限用意する書類があります。最低限用意する書類は以下の通りになります。

・商標権移転登録申請書:移転する商標の登録番号や、譲受人、譲渡人、代理人などの情報を記載する書面。
会社から個人の移転で、個人が申請するのであれば、申請人(登録権利者)が個人、登録義務者が会社になります。収入印紙を貼り付けます。

・収入印紙(商標1つにつき3万円)

・譲渡証書:譲渡人が譲受人に譲渡したことに相違ないことを証明する書面です。

・単独申請承認書:譲受人が単独(譲渡人と一緒ではなく)で移転登録申請をすることを譲り渡し人が承認することを記載した書類です。

注意点としては、株主総会の日付以降のものであることが必要です。

さらに、弁理士に手続きの代行を頼む場合、以下の書類が必要です。

・委任状

さらに、譲受人が、株式会社の代表取締役の場合、以下の書類が必要です。
これは、無償譲渡の場合、「登録権利者(譲受人)」には不利益が及ぶ可能性はなく利益相反行為にはならないものの、「登録義務者(株式会社)」には未だ不利益が及ぶ可能性があるので、利益相反行為に該当するからです。

その書類は、株式会社が取締役会設置会社であるか否かで異なります。
1. 株式会社が取締役会設置会社の場合
・商標権の譲渡を承認する取締役会の承認書
・登記事項証明書

2. 株式会社が取締役会設置会社でない場合
・商標権の譲渡を承認する株主総会議事録
・株主総会開催後に認証された登記事項証明書

なお、移転する商標が複数存在する場合には、株主総会議事録や、登記事項証明書は、援用することができます(なお、特許庁は援用する場合もコピーの添付を推奨しています)。
例えば、株主総会の議事録を援用する場合は、一例として、「なお、株主総会議事録は、同日付提出の登録第○○○号に係る商標権移転登録申請書に添付したものを援用し、省略する。」のように商標権移転登録申請書に記載します。

(2)提出方法について

郵送でも直接特許庁に持ち込んでもOKです。

但し、郵送の場合は、簡易書留、書留等、履歴が残るものを用いて下さい。

また、提出書類の控え(コピー)を必ず取っておいて下さい。

弊所では、万全を期すべく、特許庁に持ち込み、簡易チェックをしてもらった後に収入印紙を貼り付けています。

こうすることで、万が一提出書類に誤りが見つかった場合、収入印紙を書類からはがすという危険な処理(?)を行わずに済みます。

そして、その場にコピーを持ち込み、コピーに受領印を押してもらうようにしています。

(3)移転が完了する期間について

特許庁の説明では2週間程度ということですが、体感では1ヶ月半~2ヶ月かかります。

しかし、書類に不備があると、再提出となるため、さらに期間が伸びます。

(4)移転が完了すると、移転元(今回の例では会社)には、商標登録済通知書が葉書にて届きます。

一方、移転先(今回の例では個人)宛には、譲渡証書の裏に特許庁の証明印が押印されたものが書留にて届きます。

これは、移転元は最早権利者ではないので、通知だけしておけばよく、他方、移転先は新たな権利者となるため、何らかの証拠が必要だということです。

このため、この譲渡証書が登録証の代わりになります。大切に保管しておいて下さい(新たに登録証が発行され、送られてくることはありません)。

なお、商標権の移転手続きは、個人でも可能です。しかし、商標権の移転を急ぐ場合は、万全を期すべく弁理士に処理を代行してもらうのがよいでしょう。